oomoriwestのブログ

東京のブルックリンこと大田区大森地区ときどき京急沿線の日常を綴っています。

震災10年・蒲田で食した滋味深い福ごはん

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東日本大震災から10年目となる3.11。蒲田の『だし和食 福もと』さんで、福島県産の野菜や加工品が凝縮した、滋味深いランチをいただいてきました。天ぷらにされたニンジンやゴボウ、イモやネギ。副菜には干した大根、あおばた豆の煮浸しなど。どの野菜も味が濃く、生命力がみなぎる素材ばかり。

東北生まれの私には、こうした野菜尽くしの食卓が懐かしく、震災10年という大きな節目に故郷に帰れないモヤモヤを、静かに落ちつかせてくれる特別な一膳になりました。

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実はステイホーム中、ちょっと食欲が落ちているな…と感じていました。原因はコロナ禍のストレスと思っていましたが、それだけではなかったよう。

気づきは「このお肉は、アヒルなんですよ」というご主人のひと言でした。え、アヒル? 聞けば、田んぼに鴨を放して雑草や害虫駆除の役目を果たしてもらう合鴨農法は、アヒルを使うこともあるそうです。今回、お膳で提供いただいたのは、まさに田んぼで活躍していたアヒル、とのこと。筋肉質で野性味あふれるお肉を味わいながら、ふと振り返れば、こうした食材の背景を想像して食べる機会が、この1年、ぐっと減っていたような。産地の方々と直接会話することもなく、ただ、買ってきた野菜を切って、炒めるだけの日々。こんな思考では、食への欲求も刺激されないわけです!

「生産者の顔が見える」ことは、安心や安全という側面だけでなく、食材と心を通わせるためにも大切だったんですよね。そのことにあらためて気づき、心の底から、「おいしかったです。ごちそうさまです」と手をあわせたくなる食事になりました。

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「最後にデザートをお持ちしますね」と運ばれてきたのは、一見スイーツには無関係と思える、あの素材のアイスクリームでした。「肉を巻いたりするアレですか?」とご主人に声をかけると、「ええ、アレです」と、にこやかな返し。使っていた素材はなんとエゴマでした。エゴマがふんだんに入ったプチプチ食感がたまりません。福もとさんの素晴らしい技を、アイスでも堪能できるなんてーーー。

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野菜を提供してくれた福島県南相馬で直売所を営む『小高マルシェ』の皆さん、そして、福もとのご主人。至福の時間をありがとうございました。

今回は、福もと×福しまのコラボ企画ということで、店頭にも南相馬の特産品を並べて、紹介されていたのですが、それだけでなく、「食事を終えた方に、新鮮野菜と加工品の詰め合わせを差し上げています」とのこと。私もひとついただきました。

↓見てくださいよ、この元気な野菜。愛情を込めて栽培されていることが、ツヤやハリから伝わってきますよね。なかには珍しい「芋がら」も入っていました。

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さて、いただいてばかりではいられません。今回、『小高マルシェ』の方から、地元の農家さんへ届ける動画メッセージをお願いされ、私もひと言参加しました。コロナ禍で福島に伺うことができず、あちらから東京に来ることもできない。動画を通して、こちらの気持ちが、少しでも地元の皆さんの励みになるといいな…。

10年前のあの日、私が生まれた町も津波で一変し、今もなお大規模な復興の途中です。コロナが終息するまでの間、離れた場所からできることは限られてしまうかもしれません。それでも、その時その時、被災地から望まれていること、できることを、少しでも長く続けていきたい、と、今日も思っています。

 

(K)